日本能率協会(以下JMA)が、各企業の次世代経営層・経営幹部(部長クラス)を対象として開催している【エグゼクティブ・ビジネスリーダーコース(以下EBL)】。「経営視点を養い、意識・行動を変革する」「経営構想力と経営主導力を身につける」そして「自身の目指すべき経営者像を確立する」という狙いのもと、今日まで数多くの経営リーダーを輩出している本コースの特長や参加の意義を、全体コーディネータを務める松田 将寿氏(Transformation Consulting合同会社 代表社員, Management Consultant)に聞いた。
コーディネータとしてEBLにおける学習効果の最大化を導く
―― まずは、松田先生のご経歴と研修の実績について教えてください。
私は、1994年にJMAグループの株式会社日本能率協会コンサルティングに入社し、2018年末まで在籍しておりました。2019年に独立し、30年以上に渡って経営コンサルタント経験を積んでおります。JMAとの関わりでは、ものづくり総合大会、生産・開発マネジメントコースの海外合宿、R&Dイノベーションフォーラム等でコーディネーターを務め、グッドファクトリー賞の審査員をさせていただいております。EBLには、2024年度から全体コーディネータとして参画しています。
―― EBLにおける全体コーディネータの役割を教えてください。
EBLは、JMAの「伝統と革新」が融合したプログラムであり、大変良く練り込まれたものになっています。このプログラムの設計意図や狙いを汲んで、受講生の学習効果を最大化するサポートが、全体コーディネータの役割となります。第1単位初日に<オリエンテーション>を実施しておりますが、単なる概要説明ではなく、学習効果を高めることと、マインドセットを行うことを狙っております。このオリエンテーションでは、EBLの全体構成・各内容の必要性・プログラムの設計意図や全体コーディネーターの役割をご理解いただくとともに、「何を学んでいただきたいのか」「どのような観点で学んでいただきたいのか」そして「(社会・会社から)何を期待されているのか」を"現場目線"でお伝えし、スタート時のマインドセット(主体的・能動的学習スタンスへのスイッチ)をしっかりと行っています。
その後に単位講義が始まりますが、各講師の方が登壇する前・後に、必ず<ブリーフィング(導入講義)>と<デブリーフィング(振り返り)>を実施しています。ブリーフィング(導入講義)では、「どのような視点・どのような視座から臨んでほしいか」を受講生にあらかじめインプットしていただくことを目的とし、デブリーフィング(振り返り)では、各単位の内容や要点の反芻復習および関連情報の提供を行うことで、理解をさらに深めていただいています。さらに、計5名の経営者講話の後に毎回実施している受講生同士のグループディスカッションでも、議論の観点を整理・集約し、知見を広げ、記憶に定着してもらうことを、コーディネータとして心がけています。
その他にも、EBLを通じて受講生に作成していただいている「自身の成長戦略(My Growth Strategy Canvas)」に対してのアドバイスや、必要に応じてサイドディッシュ・インフォーミング(単位講義以外の追加セッション)を行い、経営リーダーとして必要な知識・観点の強化と補完を行っています。
日本企業が直面する経営人材育成の課題
―― EBLは、各企業の「次世代経営層・経営幹部」を対象にしていますが、現在どのような課題があるとお考えですか。
二点挙げたいと思います。一点目は、『リーダーシップの欠如』です。今日、日本の産業界・経済界が厳しい局面にあることは周知の事実かと思います。そのような中で従来以上に求められているのが、「現状を打破していく力」と考えます。しかし、現実はそのようなリーダーシップを発揮できる人材の育成は、多くの企業で十分と言える状況にないと思われます。だからこそ、経営層に上がる前に「自分が経営者である」という視点に立って、「どのように将来にわたって事業や組織を牽引すべきか」を考える癖とスタンスを身につけることは重要でありますし、"分かったつもり"ではなく、改めて自社や自分自身を客観的に見直す必要があると私は思っています。
二点目が、『先例からの脱却』です。多くの日本企業では同調傾向が強くなりがちで、昔からの慣習を踏襲し、会社独自の作法に従って戦略や計画を策定・実行しがちのように見受けます。それら全てが悪いとは言えませんが、そのような状態でも成長できた時代は、もはや終焉を迎えていると言っても過言ではありませんし、結果が伴っていなければ改める必要があると思われます。これからは、新しいスタイルを「自分たちの手で作り上げていく姿勢と行動」も必要でしょう。
以上の二点は、どこでも言われていることでしょうし、頭では分かっても、実際に属する組織の中ではなかなか実行できていないのではないでしょうか。
EBLではそのような課題に向き合ってきた経営者たちのお話を直に聞き、経営者の視点として質問する機会がありますので、勇気づけられマインドが上がるはずです。
次世代を担う経営リーダーだからこそ、視点・視座を磨く重要性を改めて認識してほしい
―― EBLの受講生の多くは【部長層】です。一般的に、現場管理から脱して「経営視点」で「組織に変革をもたらす役割」へと引き上げることが難しいとされていますが、その辺りについてはどのようにお考えでしょうか。
私としては、二つの考えを持っています。一つ目は、『現在従事している業務の延長線では経営視点を養うのは非常に難しい』ということです。今の時代の部長層では、"プレイングマネジャー"の割合が多くなっていると思われます。その立場に置かれながら「経営者視点に立ちなさい」「1つ、2つ上のポジションで仕事を見なさい」と言われても、実行するのは容易ではありません。なぜなら、自身のプロジェクト管理から部下のメンタルケア等に至るまで、"今"現場で起きているさまざまな問題・課題に対応するという、"目の前"の管理業務を遂行しなくてはならないからです。だからこそ、日常世界を離れ、EBLのような社外の次世代経営層・経営幹部を対象にした実践的なコースに参加して、実務経験豊富な各分野の一流の講師陣、そして先人の経営者の方々の実体験に基づく"軸"のある話を聞き、「経営者がどういう観点で見ているのか」「どういう姿勢で対処していくのか」を学び、自身に合う形で吸収していく必要があると思います。
二つ目は、『同じ水の中では変革を志向していくことは難しい』ということです。どうしても議論相手は身近な仲間内、近しい上下関係の中になりますし、同質化した会議の場に晒され続けます。つまり、多角的な異質な情報や視点、考えに触れる機会が少ないのです。そのような状況下では、革新的なことを考えていても本当に自分の理解が正しいのか確信が持てず、疑問や迷いが生じてしまうことが多くなってしまいます。その点、EBLでは異業種の、ほぼ同世代で似たようなポジションにある受講生同士がディスカッションを交わすことで、新たな視点や発想・観点に触れ刺激を受けることができ、ディスカッションを通じて自身の考えの是非や、相手の反応を安全な状況で問うことができると思われます。これは、経営者としての視点や視座、マインドを吸収していただく上で非常に重要な点だと思いますし、他者と議論を交わすことで"不安や疑問"が"確信"へと変わることも体感できると思われます。
JMAとしても、コーディネータとしても、このようなことにEBLの価値があると強く考えています。



