経営者として活躍するOB
「経営者に向けた厳しい試練の日々、そこで学んだ“共感経営”」(2024年5月29日)

2012年度「エグゼクティブ・マネジメントコース」修了
河野 誠 氏株式会社キッツ 取締役 代表執行役社長
2012年に「エグゼクティブ・マネジメントコース」(EMC)を修了され、2021年に社長に就任した河野さんに、参加時のエピソードや気づき、これまでのビジネスキャリア、そしてご自身の経営観・ご持論等について伺いました。
聞き手:曽根原 幹人(日本能率協会 経営研究主幹)
EMCへの参加・・・期待される喜び、そして多くの出会い・体感
EMC参加に指名された時は嬉しかった。当社から初めての参加者であり、また、経営幹部候補の一人だよ、と会社から“意思表示”をされたことが感じ取れ、まさに「期待される喜び」を実感した。多忙な時期ではあったが、私のモチベーションはコース期間中も下がることがなかった。
開講して最初のプログラムで経営の「倫理観」について深く考えることができたのは、自身の経営者としての在り方を見定め・基軸を形成するのに重要な機会であった。優れた戦略や新しい知識をインプットするより大事なことであったと思う。一流の企業幹部との濃い交わり、講師陣の厳しい指導もあり、プレッシャーは強かったが、議論に貢献しようと積極的に発言したことを思い出す。中でも経営者講演では、経営実務の経験からくる身に焼きつくような言葉に、身震いすることもあった。社内にいるだけではできない経験が多くあった。
また、ミャンマー合宿では、“アジア最後のフロンティア”と称された国が今後どう豊かさを獲得していくのか、その魅力や現実を体感でき、後の当社のASEAN戦略にも活かすことができた。
研修後の頻繁な異動で、全社経営視点を獲得
EMC参加前に、中東でのプロジェクトで大きな失敗をし、会社に損害を負わせてしまったことがあった。その時、2代目社長で、当時の最高顧問は「高い授業料だったな、一生かけて返すんだな」と再びチャンスを与えてくれた。私を目覚めさせ、会社を背負って立つ一員になろうと覚悟を決めた出来事である。

その後、コースに参加し、長く営業畑だった私が、生産管理、事業企画、経営企画(執行役員就任)、ASEAN地域統括(シンガポール駐在)、バルブ統括本部長(常務)と、1~2年毎に異動になり、社内の大半の機能・部門を経験することとなった。組織によっては、自身が所属していた営業部門との関係性で、 “居心地の悪さ”を感じることもあったが、全社最適で良くしていこうと、方向性や思いを語り、関係構築に努め、信頼を獲得してきた。今振り返ると、コースで学んだことを実践する場であり、経営者としての視座・責任感を醸成する大変良い経験だったと思う。
“共感を得る経営”で一丸となる力を引き出す
私の経営持論は、「共感を得る経営」。企業は経営者だけが頑張っても意味がない。社員全員の力を引き出す経営の努力が求められる。ビジョンを掲げ、戦略を策定し、実行に向けて発信したり熱く語ったりしながら、自身の想いを組織に浸透させていく。故・稲盛和夫氏が私の理想像である。
異動した先でも、部門の責任者として、組織全員に、着任の目的や自身の志・夢、そして、やりたいことを明確に、刷り込むように伝えてきた。コースの最終プログラムである「社長就任模擬演説」の経験もこの伝える力に繋がっている。共感を得て人をその気にさせ、巻き込み、組織を一枚岩にして前に進めるリーダーシップが経営者にとって最も大事であろう。
以上