経営者として活躍するOB
エグゼクティブ・マネジメントコースに参加して(2022年12月21日)

2002年度「エグゼクティブ・マネジメントコース」修了
中田 卓也 氏ヤマハ株式会社 取締役 代表執行役社長
多様で破天荒な同期との出会いで、「井の中の蛙」だと気づく
2002年、社命によりEMCに参加しましたが、当時は大変多忙だったため、正直、最初はネガティブな気持ちで出席していました。「なぜ今、私が参加せねばならないのか」と上司や人事に不満を漏らしたことを覚えています。しかしながら、多種多様な業種・職種のリーダー達と出会い、意見交換を繰り返すうちに、自分の意識は大きく変化していきました。受講開始から3か月くらい経ったころだと思います。
私はヤマハしか知らずにいたため、自社の常識が経営の常識だと思っていたのですが、他社の経営手法や発想・考え方に触れ、自分がまさに「井の中の蛙」であることに気づかされました。また、私は当社の中では“弾けている”ほうでしたが、EMCにはもっと“弾けた”、破天荒な仲間がたくさんいました。海外合宿(中国)に行った際には、公式の研修プログラムでは飽き足らず、メンバー同士で話し合ってプログラムを加え、学びの機会を増やしたこともありました。
思考の柔軟性、多面的・複層的視座など、経営の判断軸を獲得
今思えば、自分の知見が大きく広がった1年でした。ものの見方・考え方の多様さ、また哲学・文化・歴史等の認識を持つことの大切さを教えていただきました。このような人文科学等の学びも非常に有益だったと思います。
このコースでの経験は、その後の私の経営観にさまざまな影響を与えました。考え方に柔軟性が生まれ、多面的・複層的に物事を見て判断・決断ができるようになったのは、EMCを受講したおかげだと思います。また、新たなメッセージやコンセプトの創造、あるいは事業構造を見る目にもコースでの学びが役立っています。それまで、製品の価格は「原価+利益」をベースに決定していましたが、他社の高収益事業の構造分析を通じ、「顧客価値」を基軸に考え直すようになりました。まさに“価値創造経営”の視点を獲得したといえます。
当社商品は「人間必需品」。世界中の人々のこころ豊かなくらしのために
今はまさにサステナビリティ経営の時代。様々な企業が社会をよくするための取り組みを発信しています。以前は、企業には利益追求が求められていたので、あまり「社会のために」とは言いづらい面がありましたが、時代が変わり、今の企業にはSDGsなど社会課題の解決が求められています。ある意味、「あるべきところ」に戻ってきた感覚です。これからのリーダーは、どんどん利他のメッセージを発信し、周りを元気づけることが必要だろうと思います。
ちなみに私は、当社の商品は「人間必需品」だと言っています。生活必需品ではないけれど、人間が人間らしく、こころ豊かに暮らすためには、音・音楽が必要不可欠なのだ、と。これは、ある日ふと口をついて出てきた言葉ですが、こういったメッセージの背後にも、EMCでの学びが息づいているような気がします。
リーダーに、仲間を“その気”にさせる「熱量」はあるか
経営者の仕事は、企業価値を最大化すること。そのために必要なことは何でもしなければなりませんが、中でも、私は「働く仲間を“その気”にさせる」ことが最も重要だと考えています。仕事の成果は、その人の「スキル」×「パッション(熱量)」で決まります。リーダーシップに置き換えると、リーダーの「熱量」の大きさが、メンバーの納得感ややりがいを引き出し、大きな仕事を成し遂げる原動力になるのです。
もう一つの重要な要素が「好奇心」です。これから経営者を目指す人たちには、好奇心を持って自分を刺激し続け、自身の枠を飛び越え、壊すようなチャレンジをどんどんしてほしいと思っています。そのためにも、相互に刺激し高めあう仲間や同志の存在が必要なのでしょう。