日揮グローバル株式会社 茂野 義昭氏

真摯な議論や内省を通じて、
自らの軸や経営者としての志を醸成する

茂野 義昭氏
日揮グローバル株式会社
執行役員
エンジニアリング本部 本部長

日本能率協会が主催する、「エグゼクティブ・マネジメントコース」(以降EMC)は、次代の経営人材を育成する研修プログラムです。経営に関するテーマプログラムと共同テーマ研究、リベラルアーツの学びなどを通じて、経営者に必要な資質を磨いていきます。

今回は、2024年度にご参加いただいた日揮グローバル株式会社の茂野 義昭氏に、このコースで得られた学びや修了後の変化について伺いました。

自分は何もしらないと自覚する機会となる

―― EMCのプログラムで最も印象に残っていることは何ですか?それは、なぜですか?

日揮グローバル株式会社 茂野 義昭氏のポートレート

これほど得ることが多い研修を今まで受けたことがありませんでした。本当に目から鱗の連続でした。特に印象に残ったことが、三点あります。一つ目は、各プログラムの前に提示される課題書籍や参考書籍です。それらを読みこなした上で事前課題に取り組みます。今まであまり集中的に本を読んだことがなかったので、正直言って、最初は苦痛でした。しかし、読み進めていくに連れ、「自分自身がいかに無知であるか」「怠惰であったか」を思い知らされました。本を読むようになったおかげで、新しい知識や世界の動きに触れることができ、いつの間にか読んだ本を部下や後輩に薦めている自分がいました。それが、自分を変えるきっかけになったと思っています。

二つ目は、最後のCEOプレゼンテーションです。経営テーマのプログラムの中では、最も印象に残っています。極限の緊張の中で、記者会見の本番さながらに、「自分が社長として“やりたいこと”や“志”をいかに見せられるかを意識し試すことができました。しかも、その後執行役員及び本部長に昇格することになり、あの経験がすぐに役立ちました。その意味でも、他にはない絶好の機会が得られたと思っています。

三つ目は、京都合宿を通じてリベラルアーツを学べたことです。例えば、日本の美術についてレクチャーを受けたり、本山本願寺では「生と死」に関する講話を聞きました。いずれも私からすると日頃とは全く別の観点であっただけに、衝撃的でした。

すべてを“自分事”として捉え、考え抜くことを誓う

―― コースに参加された後に、ご自身に起きた変化がありますか?それは、どのようなことですか?

最初の講義で、メンターの八木 洋介さん(株式会社People first 代表取締役)が、「日本の社会人は世界一勉強していない」「日本ではゼロ勉強社会人が5割以上もいる」という話をされていました。「それは、まさに自分だ」と痛感しました。今まで30年も社会人を続けて来たものの、それほど勉強をして来なかったと気づき、自分の無知と世間知らずを思い知らされました。

これまでどこか“他人事”のように捉えていた違和感が、突如として“自分事”となり、これからは一日たりとも無駄にせず、「自分は一体何をやりたいのか」「人生の軸として何を大事にしているのか」「志と覚悟があるのか」と自分と向き合い、考え抜くことを誓いました。それが、このコースに参加して起きた変化であると思っています。

―― その変化は仕事の仕方や組織マネジメントにどのような影響がありましたか?

先ほどもお話した通り、研修が終了して間もなく、私は執行役員 本部長という職に任命されました。まさに、“自分事”となり、自分がやらなければ何も始まらないという状況になりました。本部のメンバーに正面から向き合い、そして自分とも向き合う、そんな覚悟が自分に芽生えました。

講師陣や参加メンバーから多様な視点を学ぶ

―― 異業種の参加メンバーとのワークや討議はいかがでしたか?

自分自身が新たな気づきを得られた場でした。それぞれの会社で高いポジションにいる方々が集まっていて、しかもそれぞれが異なる経歴を持っているということもあって、私とは全く違う視点で色々な意見が提示されました。いかに自分が狭い視野で物事を考えていたのかと痛感させられました。

恐らく、それは私だけでなく参加した皆も感じていたことだと思います。お互いに意見や個性の違いを認識しながらも自分の考えを発言し合う中、目標に向かってどう考えをすり合わせていくか、そこがかなり難しいところでした。ただ、私自身としては「その困難さが自分を成長させてくれる」「自分への挑戦となる」と信じていたので、チームのリーダーとして積極的に取り組んでいきました。

異業種メンバーと意見交換する茂野 義昭氏(仮)

―― テーマごとに、多くの講師との出会いもあったと思いますが、いかがでしたか?

日本における一流の経営者や教授陣が勢揃いし、各分野の濃密な講義やワークをしていただきました。こうした機会は恐らく他にはないと思っています。しかも、個性的でバラエティーに富んでいるので、各自言っている内容が異なっており、一辺倒の講義ではなく、違う解釈をしてくれていました。それが、非常に興味深かったです。

結局、どれが正しいというのはなく、そのタイミングや状況に応じて考え、結論を出して行く、ということだと思うのですが、違う考えを持った人たちが講師陣であることは自分の考えを深める上でとても良かったと思います。

それと、我々が普段あまり触れることがない、中国古典や日本美術、仏教などリベラルアーツを学べたことも嬉しかったです。これからの人生の豊かさにつながる有意義な機会でした。

仲間と議論を尽くし、研究の成果をまとめ上げる喜びを実感

―― チームでの研究活動を通じて構想力を鍛錬する「共同テーマ研究」、振り返っていかがでしたか?

共同テーマ研究に臨む茂野 義昭氏とチームの皆さん(仮)

共同テーマ研究では、6人の仲間で一緒に学び、悩み、笑い、語り合って、助け合いながら、一所懸命考え尽くして、そして互いに喜びあうことができました。とにかく調べ尽くし、チームの意見として一つに集約していくプロセスにやりがいを感じていました。

私たちが取り組んだのは、「地球のハピネスを目指して~日本と発展途上国の『共創』トランジション~」というテーマでした。これを決めるにあたっては、「自分は何を目指したいのか」「何をやりたいのか」などといった共通の問題意識を持った人が集まりグループワークに取り組んだものの、実際にはそれぞれの考えも強みも違い、当初はなかなかまとまりがつきませんでした。

恐らく、どのチームも一緒なのでしょうが、進んでは振り出しに戻るの繰り返しでした。要は未踏課題への挑戦ですから、今まで誰もトライしていないところに、どうやって解決策を見出していくかといった問いに向き合わないといけません。「自分たちが考えている仮説が正しいのか」「気づいていない重要な問題が他にもあるのではないか」「これで課題は解決できるのか」等、さまざまな問いに対して悩み、考え抜き、議論を繰り返していきました。最終的には、研究の成果を素晴らしく綺麗に纏め上げることができ、仲間で感じ合えた達成感と喜びは人生の財産になりました。まさに戦友です。

―― 経営経験を持つ“メンター”との個別面談を振り返り、印象に残っていることをお聞かせください。

経営者としての実績をお持ちの方から、自分自身のこれからの会社での立ち位置や会社経営・運営の課題、個人と会社の成長戦略などに関して、実践的な解決アプローチをアドバイスいただける貴重な機会となりました。特に、CEOプレゼンテーションを終えた後のフィードバックでのメッセージにはとても励まされました。1時間×2回という短い面談でありながらも、私の強みや弱みをしっかりと理解してくださり、「もっと自分に自信を持ってアピールするように」と言っていただけたのが、嬉しくてたまりませんでした。

自分をさらけ出し、向き合う覚悟を持って臨んでほしい

―― 最後に、これから参加される方にアドバイスをいただけますか?

全集中でこの研修に浸ってほしいという想いが一番強いです。一単位、一時間でも無駄にしてほしくありません。とことん自分をさらけ出し、自分と向き合い、「自分は何を成し遂げたいのか」「自分は何者なのか」を常に考えながら研修を受けていただきたいと思います。

また、自分を知るためにも仲間が大事になって来ます。自分では思いもよらないようなことを、それぞれが違う視点から発言し、新たな気づきを与えてくれるからです。失敗と危機に真剣に向き合って、より深く、より誠実に相手の意見を聞き、指摘を受け入れる覚悟を持って臨めば、間違いなく“生涯の仲間”と出会うことができます。本当にこの研修の時間と戦友との出会いを大切にしていただきたいです。

インタビュアー日本能率協会 エグゼクティブ・マネジメントコース事務局

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