日本能率協会(JMA)が主催する「他流試合型ワークショップ」は、毎年多くの企業からご参加いただく課長・マネージャー層を対象とした選抜型の研修プログラムです。
このワークショップは、1社から5名のチームで参加し、異業種の企業5社が集まって互いの成長戦略を提案・競い合うという、ユニークなプログラムが特徴です。
他社の優れた戦略や考え方から学びを得られるだけでなく、他社から選抜された優秀なメンバーとの交流を通じて、新たな視点や気づきを発見できます。
また、異業種の視点から自社の事業を見つめ直すことで、当たり前だと思っていた自社の強みや良さ、業界の優位性を再認識できる機会として評価いただいています。
この度、2024年に参加いただいたSCSK株式会社の角 芳之氏と渡辺 達也氏、またお二人に他流試合型ワークショップへの参加を決められた上司でいらっしゃる安藤 裕氏の三名に、このワークショップを選ばれた理由や期待されていたこと、得られた視点や気づき、その後の変化などを語り合っていただきました。
異業種との交流は視座を高める絶好の機会
―― 「他流試合型ワークショップ」へのご派遣を検討された背景や課題からお聞かせください。
【安藤】 課長層メンバーが今後、部長や本部長へと昇進していくためには、大所高所から物事を見ることが重要になってきます。そのためには、異業種交流が気づきを得る良い機会になると考えました。実際、課長層は良くも悪くも現場にすごく強いと言え、現場のことを他の誰よりも良く理解しています。しかし、それは裏返して言えば現場に入り込み過ぎていて、どうしても視野が狭くなりがちです。
その点、私も2023年に日本能率協会が主催する「エグゼクティブ・マネジメントコース(EMC)」に参加し、異業種の方と交流したことで視座がかなり高まり、自分の常識が他人の非常識であることを肌で感じ取ることができました。そんな経験から日本能率協会には絶対の信頼を置いており、安心して派遣できると考えました。
―― 安藤様の想いを今回参加されたお二人(角さん、渡辺さん)は、参加される前にお聞きになられていたのですか。
【渡辺】 研修への参加が決まった後に、オリエンテーションの場で安藤さんからこの研修の目的や意義の説明がありました。
【角】 私たちがこの研修に参加することが決定する以前から、安藤さん自身が研修で学んだ内容や様々な気づきを得た内容を聞いていたため、興味を持っていました。
また偶然にも、安藤さんと一緒に出張した際、エグゼクティブ・マネジメントコース(EMC)の同期の方と3人で会食をする機会があり、その場での会話から「素晴らしい研修の場なんだな」と痛感したことを覚えています。
―― 研修には、どんな心構えで臨まれましたか?
【渡辺】 かなり気構えていましたね。安藤さんから、「SCSKがナンバー1であることを見せてこい!」と発破を掛けられていたからです。そこは、強く意識しました。
【角】 「期待しているぞ!」(笑)みたいな雰囲気がありました。
でも、それがプレッシャーになるのではなく、むしろすごく楽しみでした。
参加者の気迫に触発され、業務を忘れて研修に没頭
―― 「他流試合型ワークショップ」全体を振返って印象に残っていることは何ですか?
【角】 良い意味で予想外であったのは、他社からの参加メンバーも講師もポジティブな思考を持っていたことです。私自身、結構前向きなタイプだと自負しているのですが、とてもインパクトがありました。特に講師の泉本さんのバイタリティ溢れる説明や見解に圧倒され、「こんな講師がいるのか」と驚いてしまいました。
【渡辺】 自分自身がいかに井の中の蛙であったかを思い知らされた研修だった気がします。「社内天狗にすぎなかったんだな」と感じてしまいました。
―― これまで受講された研修やセミナーとの違いがありましたか?
【角】 一日8時間、業務のことを一切忘れて研修に没頭したのは、初めてでした。今までは、研修を受けながらも仕事絡みのチャットをやりとりしていたのですが、このワークショップでは自然と集中し、没頭していました。
【渡辺】 研修の内容や意見交換のボリュームが盛り沢山なので、集中していないとついていけなかったです。
他社に学ぶと同時に自社の強みを再認識できた
―― 他社メンバーで印象に残ったことはありますか。
【渡辺】 スキルという点では、みずほフィナンシャルグループさんの分析の仕方や観点が鋭いと感じました。どういう資料を探し出して来ているのか、どこを見ているのかなど、大変参考になり、自身の仕事に取り入れようと思いました。
【角】 同感ですね。多角的かつ大局的でした。何をどう発想していけば、あんなシナリオを短時間で仕上げることができるのか。しかも、何の苦労もなかったようにさらりとプレゼンテーションをされていました。そうした能力は大変刺激になりました。未だに思い出してしまいます。しかも今回参加している5人のメンバーは、日頃業務上の関わりがなく、この研修で初めて顔合わせをしたと聞き、ただただ驚いてしまいました。
―― 御社も素晴らしかったと思います。自社の強みを実感できたのではないですか?
【渡辺】 確かに、いくつか強みを発揮できたかもしれません。例えば、ファシリテート力です。当社のメンバーが、色々なチームで調整役を果たしていました。それから、想像力です。他社の10年先を考える機会があったときに、現実味はないかもしれないものの、想像力豊かに発想できていると思いました。
【角】 キャッチーな言葉でまとめる力も、SCSKらしさかもしれません。研修期間中に他社の参加メンバーから、「どういう教育を受けているのですか」と質問されました。
―― 逆にワークショップの中で、一番苦労した点は何ですか?
【渡辺】 時間配分です。他社向けにビジネスプランを考える時間が、全く足らなくなってしまいました。
【角】 頭の切り替えや瞬時の判断です。チームの中に大変長けているメンバーがたくさんいたので、ついていくのが精一杯でした。
―― 日本能率協会事務局から見ていて、御社参加メンバーの雰囲気によって、クラス全体が和らぐことができたと思っています。研修プログラムを終えてからの懇親もリードされていましたね。
【渡辺】 安藤さんから、「絶対に交流を深めてきなさい」と強く言われていました。
【角】 ワークショップの期間中だけでなく、「また会おう!」みたいな雰囲気が伝わってきたので、同窓会の開催も声がけさせてもらいました。参加企業は全国各地から参加されていたので、その後も、各地で分科会が行われています。
濃密な時間だからこそ、得られるものが多い
―― 安藤様は、研修期間中、会場にお越しになられ、研修をオブザーブされました。どんなことをお感じになられましたか?
【安藤】 第一印象は、たった3日目なのに皆すごく仲良くやっているなということでした。自社のチームメンバーだけでなく、他社のメンバーとも一致団結していて素晴らしいと思いました。かなり濃密な時間を一緒に過ごしてきたのだろうと想像しました。
各社のプレゼンテーションも聴かせていただきましたが、それぞれの会社や業界のカラーが出ていました。先程も話題にでていましたが、みずほフィナンシャルグループさんのプレゼンテーションが卓越しており、数字の裏付けも含め、短い時間でよくここまで緻密に作り上げたものだと感心してしまいました。また日揮グループさんも、グローバルに事業を展開されているだけあって、ダイナミックな考えをお持ちだと思いました。その点、SCSKは実現性は高そうでしたが、発想は多少おとなしかったかもしれません。それが、SCSKのカラーなのかもとも感じました。
研修での学びや気づきを現場で実践する
―― 「他流試合型ワークショップ」を通じて得られたことや具体的な変化をお聞かせくください。
【角】 経済的な価値だけでなく、社会的な価値を高めていくという視点を持つことできました。
【渡辺】 多角的な視点を持つ重要さを学びました。今捉えている案件や提案している案件を様々な切り口から見たときにどうなのかという習慣付けが少しずつでき始めています。自身のチームメンバーにも、その要素が重要であることを意識して伝えています。
―― 渡辺さんは、「目先の仕事ではなく未来志向に向けた価値観を意識されている」とレポートでもお書きになられていましたよね。また合わせて"建設的な対立"の重要性も指摘されていました。今の仕事で実践できていますか。
【渡辺】 部下に対しては、できていると思います。ただ、対上司や対先輩になるとまだまだ自信がないです。威圧的というか、相手の意見にかみついてしまうところがあるような気がします。
自らの度量を拡げることで、さらなる成長につながる
―― 安藤様からご覧になられて、研修を経てお二人が成長しているとお感じになられますか?
【安藤】 より多様性を受け入れるようになっているのではないでしょうか。どうしても、上司になると深層心理で自分の意見を主張してしまいがちです。そうではなく、部下の意見を客観的に聞き、たとえ自分の期待や想像と真逆の内容であったとしても、汲み取ってあげる姿勢が重要だと思っています。それが、少しずつできるようになってきていると思っています。
―― 研修を終えた今、「他流試合型ワークショップ」の受講をどんな方にお勧めしたいですか。これから参加する方、参加を検討されている方に向けたアドバイスもお願いします。
【渡辺】 キャリアが固執している人ほど、他流試合型ワークショップは有益だと思います。他を全然知らないからです。私の反省も含めて心構えとしては、参加企業に対して興味を持って事前にしっかりと調べておくべきということ。自ずと、聞きたいことも出てきますし、会話も弾みます。
【角】 大いなる意欲や野望を持っている人も刺激を受けられるはずです。これから参加する自社メンバーにも参加する際には、「高い意識を持って臨むよう」にと言いたいですが、本音としては「思い切り楽しんできてもらいたい」と伝えたいです。
―― 本日はありがとうございました。



