人的資本経営が叫ばれる今日、人事部門が経営層といかに連携していくかが問われています。しかも、働き方も多様化しており、過去の延長で人事課題を解決するのは難しい時代になってきています。それだけ、課題の難易度が高まってきているといえるでしょう。もはや、自社で培ってきた人事の知見やノウハウを駆使するだけで、道が切り開かれることはありません。外部からも人事の新しい概念や知識を学び、自社に取り組んでいく必要があります。そう感じている人事担当者は多いのではないでしょうか。
日本能率協会(JMA)が開催している「人事研究会」は、そうした人事の方々に自社における人や組織のあり方を見直してもらうための研修プログラムです。専門家による講義やゲスト講演、チーム研究などを通じて、自身が“目指すべき人事リーダー像”を確立していきます。
今回は、第13期プログラム(2024年度)にご参加いただいた、三井物産株式会社の中島 恵津子氏に、このプログラムで得られた気づきやその後の変化を伺いました。
人事の経験が浅かったものの思い切って受講する
―― 現在のお立場・お役目・主な業務内容をお聞かせください。
人事総務第一部の報酬企画室で報酬企画や福利厚生、労働組合への対応を担当しています。
―― 人事として一定の経験を積まれたタイミングで、受講いただきました。その時期に人事研究会に参画されたことのご感想をお教えいただけますか?
私は、2024年1月に自ら手を挙げて人事総務部門に異動しました。以前は貿易サポートの部門に所属していたので、新たな分野に挑戦したいと考え、飛び込んでまいりました。人事総務の知識を習得するために、会社から受講を推奨された研修プログラムの一つが人事研究会。人事総務の経験値が浅くても問題ないとのことであったので、何がどこまでできるのかは全くわかりませんでしたが、思い切って選択させていただきました。
そのため、受講しながら学ぶことの連続でした。「今回のテーマは、こういうことをやるのね」と理解した上で課題図書を読みこなしながら、会社の制度について学んでいきました。その点に関しては、割と効率良くできたのでとても良かったと思っています。
本来であれば、ある程度人事総務を体系的に理解してから受講した方が吸収しやすかったのかもしれませんが、参加したからには意図的に事前勉強をするようにしました。おかげでとても勉強になりましたし、頭の整理ができた気がします。
学術的な考えや他社の意見から多くの気づきが得られた
―― 研究会では、中島さんが担当される業務以外のテーマも取り挙げられています。いかがでしたか?
そうですね。逆に「今回はこれが新たに学べた」と前向きに捉えていました。もちろん、すぐに業務に活かせるわけではないことが多いものの、学術的な考え方やアプローチにも触れることができ、とても勉強になりました。
例えば、人事制度を考えるにあたり、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する意義について、他社の取り組み例を聞いたり、学問として理念がいかに重要かを聞けたことで、目的が腹落ちすることができ納得感を得られ、理解が深まりました。
―― 毎回、事前課題に関して参加者同士でディスカッションするワークがありました。何か記憶に残っていることがありますか?
「モンスターとは何か」を議論する機会がありました。私は「それは人だ」と思い込んで話していたのですが、「制度なのではないか」という意見が提示されたときには驚いてしまいました。「ああ、なるほど」と思うと同時に、自分では全く考えていなかった意見であっただけに衝撃が走りました。
メンバーと議論を重ねることで、各社との違いを認識する
―― 人事研究会全体を振り返って印象に残っていることは何ですか?
各社の人事制度に関するお悩みを伺い、自社では当たり前だと思っていたことが意外とそうではないことや、自社の良い点に改めて気づくことができました。
そもそも、業種が異なると人の考え方やキャリアの積み方、人員の配分の仕方も全く違います。現状は制度的に対応できていなくても、業種が違うからこそやらない選択をしたと知ることができたのは印象的でした。それも、ディスカッションワークやチーム研究を通じて、それぞれがどういう業界であるのかを話し合ったからこそだと思っています。毎回事前に課題を共有いただいていましたが、それだけだとわからないことが沢山ありましたし、「どうしてそう言っているのか」も最初はなかなか理解できなかったですからね。
―― チーム研究のメンバーとの接点、つながりは上手く作れましたか?
私たちのチームには関西から参加されているメンバーがおられましたし、皆さんそれぞれお忙しかったりするので頻繁にはお会いできませんでした。ただ、物理的に会う時間が少ない分、皆で議論しあえるときにはしっかりとやりとりするようにしました。皆さんも、それを意識されていた気がします。
チーム研究ではお互いの解釈と方向性を幾度も確認し合う
―― チームの中で、中島さんはどのような役回りを果たされたのですか?
私自身、もともとコミュニケーションが得意なタイプではありませんでしたが、商社に対する期待も意識し、積極的に発言するよう心がけていました。チームの皆さんは実直で真面目な方が多かったので、ここは私が率先して口火を切って話しやすい雰囲気を作ろうと心がけていました。
―― チームとしての打ち合わせはどんな風に進めていたのですか?
2週間に1回ぐらいのペースで場を設け、毎回2時間ぐらいは打ち合わせをしていました。まずは、前回のおさらいをした上で、与えられたテーマに対する理解や解釈が同じであるか、自分たちが何を求めているのかを確認しあっていました。研究のテーマを決めた後でも、捉え方が同一であるかのすり合わせを丁寧に進めていきました。
―― 最終的には、チームとしての具体策は提示されませんでしたね。
敢えて具体策は出さないというのが、私たちのポリシーでした。せっかく議論を積み重ね、ここまで自分たちの想いを広げてきたのに、それを一つの具体策に収斂するのは難しいと思ったからです。理想じみているかもしれないのですが、想いを語り尽くすのも良いのではないかと考えました。人事研究会自体がオープンなマインドだったので、受け入れてもらえる雰囲気が伝わってきました。
業種を越えて人事課題を語り合える仲間を大切にしたい
―― 人事研究会の受講をどんな方へ勧めたいですか?また、参加する意義も併せてアピールいただけますか?
特に誰でなければいけないということはないと思います。マネージャーであってもなくても良いでしょうし、私のように人事総務の新参者でも十分学びがいがあります。ただ、そう思いつつもせめて1年ぐらいは人事業務を経験された人の方が良いかもしれません。一旦実務を離れて、異なる視点で物事を見直す時間にすることができるからです。間違いなく新たな視点を得ることができると思います。
―― 最後に、今後JMAに期待することをお聞かせください。
業種・業界を越えて、さまざまな方の考えに触れることを機会はなかなかありません。特に人事総務の仕事は社内対応が中心となるため、外部の方と接する機会が限られていたりします。それだけに、JMAさんには大変ありがたい機会を設けていただけていると思っています。
全く違う業界で人事をされている方とお話をすることで、自社との違いを理解することができます。とはいえ、同じ悩みを抱えている場合もあるので、「一人ではないんだ」と再認識できます。だからこそ、今後もこういった場をずっと提供し続けてもらえたら嬉しいです。
私自身、人事研究会を通じて多くのことを学べましたし、さまざまな業種の方と知り合えました。参加するメンバーは皆さん、名だたる企業で高いモチベーションを持って働かれている方が多く、とても良い刺激になりました。色々な視点を共有しあい、その後も長いお付き合いができる方々ばかりです。もしご興味があり、会社から受講を勧められた際にはぜひ積極的に参加していただければと思います。多くの実りと気づきが得られる非常に有意義な機会だったと感じています。



