将来は経営陣の一人としての活躍を期待される人材であっても、“現場の延長線上の感覚”で課題に取り組んでしまうことがあるのではないでしょうか。「さらに視野を広げ、視座を高めていけなければいけない」と幾度も痛感され、新たな刺激や気づきを得る機会を探しておられる方も多いと思います。
日本能率協会が開催している「エグゼクティブ・ビジネスリーダーコース(以下EBL)」は、そのような次世代の経営層・経営幹部の方々に経営視点を身につけてもらい、自らの意識や行動を変革し、自身の“目指すべき経営者像”を確立してもらうための研修プログラムとなっており、今日まで数多くの経営リーダーを輩出し続けています。
今回は、第27期プログラム(2024年度)にご参加いただいた、サッポロビール株式会社の佐々木 悟大氏に、EBLで得られた気づきやその後の変化を伺いました。
人生2度目の異業種交流研修の参加
―― 現在のお立場・お役目・主な業務内容をお聞かせください。
EBL参加当時は、ワイン&スピリッツ事業部の部長職として、ブランドマーケティングの責任者を務めておりました。今期から首都圏本部長として、東京・埼玉・千葉・神奈川・山梨の1都4県を中心とする、業務用営業部門を統括しています。
―― これまでに類似の外部研修やセミナーを受講されたことがございますか?
過去に、関西の大学が開催しているグローバルリーダー育成講座を受講しました。そちらでは、自身の“リベラルアーツ”を高めることや、“軸”を持つことの重要性を学ぶことができたとともに、多くの「仲間」と出会えたことが大きな財産となっています。
今回のEBL受講の話を受けた際も、49歳という年齢でまた新たな学びの場に行かせてもらえる有り難さと共に、日本能率協会さんという歴史ある教育機関で、今度はどのような新しい学びを得ることができるのかという期待と、異業種の新しい仲間と切磋琢磨できることを大変楽しみにしておりました。
憧れの講師や実際の経営者から多くを学ぶ
―― EBLに参加するにあたり、どんな心構えで臨まれましたか?
私は、以下の二点を意識しました。一つ目が、「経営リテラシーを体系的に学び直す」こと、二つ目が「自分が“心から目指したい経営者像”を確立する」ことです。そのためには、講師や経営者の方々は勿論のこと、同期や事務局の皆様からも学ばせてもらおうと思って臨みました。
―― EBL全体を振り返って印象に残っていることは何ですか?
以下の3点がとても印象深く記憶に残っています。
まずは、第2単位「財務・会計」の単位講師である西山先生(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)の講義です。元々尊敬している方で、EBL受講前から著書を購入しており、何度も読み返していました。他の単位講師の先生の講義も大変素晴らしかったのですが、憧れの方のお話を聞けるということで、この単位は特に気持ちが昂りました。
また、経営者講話に関しても、大変参考になるお話ばかりでした。ご登壇いただいた5名がいずれも実践的なことを成した経営者の方々であったので、すごく腹落ちできました。
そして、もう一つ忘れてはいけないのは、受講した仲間同士で、ディスカッションや懇親会を通して、日常の業務では経験できないような深い交流ができたことです。EBLの中で学びを続けていく中で、心を許せる同志のような関係が生まれました。異業種の他社かつ同じ立場の同期だからこそ、心置きなく語り合えた気がします。その関係は同期会として、今でも継続しています。
経営者としての視点や在り方が腹落ちできるプログラム
―― EBLを通じて得られたことやご自身における具体的な変化をお聞かせください。
これに関しては、二点に尽きます。いずれも、講演された経営者や単位講師の先生方が共通して指摘されていたものです。
まずは、「株主視点」で考えることの大切さです。企業価値向上のためにも、「効率良く儲ける経営=利益率を高めること」に注力しなくてはいけないと述べられており、本当にその通りだと強く感じました。
もう一つは、「コミュニケーションと組織風土」がすべての基盤であり、社長自らが陣頭指揮を執らなければいけない、ということです。いかに実践していくかは、経営者によってスタイルが異なっていたものの、皆さん経営者の人間性や人間的魅力が不可欠であると強調されていたのはとても印象深かったです。私自身も、自社や自部門でしっかりと取り組んでいきたいと思いました。
―― EBLでの学びや気づきを、自社や自部門でどのように実践されていますか?
自部門のメンバーの一人ひとりと、積極的に対話を行うようにしています。一人当たり1時間ぐらいでしょうか、全員と個別面談を実施しています。その中で、若手の部下も結構多いのですが、EBLで登壇いただいた単位講師・経営者の方々の書籍や、EBLの他の課題図書を勧めたり、今のうちから「財務・会計」や「組織風土」を学ぶことの重要性を、私なりの言葉で伝えています。
―― 他社メンバーとの交流については、いかがでしたか?
おかげさまで、今でも同期の皆様、コーディネータの松田先生、事務局の日本能率協会さんと定期的に交流させていただいています。研修期間中はもちろんでしたが、その後もフォローアップ研修、同期会や個別の集まりを頻繁に開催して、親交を深め合っています。業種も企業規模も役職、年齢、人柄もさまざまなので、大変貴重な機会で、毎回毎回が勉強になります。将来的には、経営の一端を担うメンバーも出てくるでしょう。その際にも、会社を越えて悩み事や課題を相談しあえる仲になれたらと願っています。


多様な交流を通して、自身が目指す経営者像を究めることができた
―― EBLの魅力や良かったと感じることを改めて語っていただけますか?
これに関しては二つ挙げたいと思います。
まずは、EBL全体コーディネータである松田先生の立ち位置と、明晰な解説です。やはり、EBLにおける松田先生の影響力や存在感はとても大きかったと実感しています。実際、コーディネータとして物事を的確に咀嚼してくれるので、自身の理解がより一層深まりました。
そして、最終単位で実施したビジネスシミュレーションとアセスメントです。多彩かつ本格的な内容で、自身を「自己視点」「他者視点」から客観的に捉えることができました。三日間をかけてアセスメントを受けるのは初めての経験でしたし、「これほどまでに行動課題を深掘りされるのか」と驚くばかりでした。
―― EBLのゴールは、自身の目指すべき経営者像を確立することです。佐々木さんは、いかがでしたか。
講師や経営者の方々や、一緒に受講した同期の仲間から得られた知見を基に、自分が目指す経営者像を思い描くことができました。それは、「決断力と人間的魅力を備え、ヒトの力を最大化する」経営者です。具体的には、
・明快なビジョンを自分の言語で語れる
・企業価値を高めていける
・自らの能動的な言語で牽引する
・現場感覚を大事にして社員一人ひとりの強みを活かせる
そんな経営者です。まずは一歩ずつだと思っています。
実践の場を念頭に置いた受講を勧めたい
―― EBLの受講をどんな方に勧めたいですか?
私が最もお勧めしたいのは、経営を目指している方だけでなく、中間管理職として一定の活躍はしているものの、ご自身の今後のキャリアビジョンが明確に描けておらず、モヤモヤされている方です。さまざまな苦しみや課題を抱え、それを強い意志と人間力で咀嚼し、血肉にして来られた単位講師・経営者講師の話から感じるものは数多いと思います。
また、事業の責任者として「鳥の目で財務・会計を見る」必要に迫られている方にもお勧めしたいです。管理職であっても、財務・会計を苦手にしている人が多いと思いますが、単位講師の先生の講義はとても分かりやすく実践に繋がる内容ですので、EBLで是非じっくりと学んでいただきたいです。
―― そのような方々に、何かメッセージをいただけますか?
せっかくEBLを受講するのであれば、しっかりと準備した方が良いと思います。そして、「得た知識を実践の場でどのように活かすのか」を念頭に置いて、講義や講演を受講してもらいたいです。修了した身として、それは本当に強く感じています。ただ単に、何となく受け身で参加するのは、もったいなさすぎます。「自分の仕事に応用するならどうすべきなのか」という気持ちを持って臨んでいただきたいと思います。自分の実務に当てはめて考えれば考えるほど得るものが多いことを、強くお伝えしたいです。
インタビュアー日本能率協会 エグゼクティブ・ビジネスリーダーコース事務局



