日々の忙しさに追われていると、どうしても考え方が凝り固まり、新しいアイデアが生まれにくくなるものです。
日本能率協会が、長年開催している「他流試合型ワークショップ」は、そんな状況を打破し、自社の常識や習慣にとらわれない新しい視点や発想を獲得すること、そして視野を広げ、既存の概念を打ち破ることを目的とした研修です。
このプログラムの最大の特長は、まさにその名の通り"他流試合"が組み込まれている点です。1社から5人1チームで参加し、異業種の企業5社が集まって、それぞれの成長戦略を提案し合い、競い合います。
この度、2024年にご参加いただいた東急リバブル株式会社の 白石 信博氏に、このワークショップで得られた感想や気づきについて伺いました。
左脳と右脳のバランスが重要だと気づく
―― 白石さんが現在担当されている業務の内容を教えてください。
私は現在、ソリューション事業本部の業務管理部で管理職を務めています。ソリューション事業本部は、お客様の投資用・事業用不動産に関する多様なニーズにお応えするために、さまざまなソリューションを展開している組織です。現在、新しい中期経営計画を推進する中で、提供するサービスの幅が拡大しており、より効率的なオペレーションを行う為の体制を構築し、組織のガバナンスを整える必要があります。それが、業務管理グループの役割の一つです。私自身は予決算などの業務を担当しており、「他流試合型ワークショップ」に参加した後に管理職になりました。
―― 「他流試合型ワークショップ」全体を振り返って、最も印象に残っていることは何ですか?
いかに、自分が左脳的な思考だけで物事を考えていたかを痛感したことです。他社は、全く異業種ゆえ、事業領域も取り扱うものの大きさも違うので、彼らの仕事の進め方やプロジェクトマネジメントの仕方はとても参考になりました。プレゼンの資料を作成していくプロセスが見事でしたし、ファクトだけでなく相手の共感を引き出した上で解決策を導いていくアプローチも新鮮でした。
私は日頃、計数関連の業務を担っているので数字をまとめ上げて、今どんな状況なのかを説明する機会が多々ありますが、計数やファクトを示して解説するだけでした。相手の理解度を高める、あるいは行動変容を起こすには、それらに加えて相手の感情に訴える要素を付け加え、よりストーリー性を訴求しなければいけません。講師の方が強調されていた、"左脳と右脳のバランスを取る大切さ"に、今回のワークショップへの参加を通じて気づくことができました
より広い視野や長期的な視点を得る
―― 「他流試合型ワークショップ」を通じて得られたことや具体的な変化をお聞かせください。
全体を俯瞰して見ることができるようになりました。正直に言って、当初は泊まり込みで3日間のワークショップに参加するのは「きついなあ」と思っていましたが、逆にそれが良かったのかもしれません。日々仕事に追われているので、目の前のことばかりを考えがちです。そんな中、3日間完全に日常業務を離れて社会課題や社会的意義に目線を向けたことで、実務に戻ったときに仕事に対する見方が大きく変わりました。足元だけでなく、少し先を見て仕事ができるようになったのです。その分、足元が楽になった気がします。管理職になるタイミングで、そういう視点を持てたのは、すごく良い気づきをさせてもらえたなと感じています
―― それは、まさに「他流試合型ワークショップ」のねらいでもあります。これまでに受講された研修やセミナーと比べた際に、何かお感じになったことがありますか?
「さすがだな」と感心させられたのは、講師の方のファシリテーション力です。皆の発言をきちんと拾って、そこから話を見事に広げていただきました。心理的安全性が高い環境の中で研修を受けられたのは、とても良かったです。その雰囲気が参加者全員に伝播したのか、「前向きな議論をしよう」という空気感に溢れていました。
また、研修プログラムも随所で工夫されていました。特に印象的であったのは、研修の最初にこの3日間を有意義な場として過ごすために、各チームでルールを作り、そのイメージを絵で示したことでした。結構難しかったです。
入念な準備以上に、実践の場をどう生かすかが鍵
―― 「他流試合型ワークショップ」に参加されるにあたり、チームとしてかなり準備をされたのですか?
準備しましたね。もう事前にプレゼン資料を作り切るぐらいの勢いでした。何しろ当社の場合、毎年参加しているため、成長戦略を提案し合い、競い合うプレゼンの順位では上位をねらうという会社からの期待がとても大きかったんです。「さすがに頑張らないといけない」という危機感を、メンバー全員が共有していました。
なので、事前に各社のホームページや中期経営計画を読み込んで、「こういう課題があるのでは」と議論し合い、もしその企業にプレゼンをすることになったら、こういう方向性で提案書を作ろうと決めていました。
―― そこで立てた仮説は、当たっていましたか?
他社とのコミュニケーションには、あまり結びつきませんでした。むしろ、事前準備をし過ぎてしまった感があります。なぜなら、自分たちの中でストーリーを決め過ぎていたからです。おかげで、他社のプレゼンを見た上で、「こういうストーリー、目線にした方が良いのでは」という柔軟な対応ができませんでした。もう少し"遊び"というか、"余白"を持って臨むべきであったかもしれません。もちろん、しっかりと準備をしたからこそ、自分たちに足りない部分が見えました。
―― 一番苦労された点は、何でしたか?
やはり、事前準備です。我々の場合は、入手できる範囲の資料を基に、その会社の課題感を捉え、仮説を立ててプレゼンの方向性まで詰めていましたから、結構大変でした。ただ、それだと彼らとやりとりしていく中で、もう既に取り組んでいたとか、別の課題が顕在化されてきたりしたので、あまり的を得たストーリーが提案できませんでした。そんなときには、「やはり難しいなあ」とチームのメンバー全員が思っていたはずです。
他社だけでなく、自社の社員を知る機会にもなった
―― 同じチームで戦った自社メンバーとの作業はどうでしたか?
まずは、メンバー5人で仕上げていくこと自体が、とても楽しかったです。何しろ、いずれも所属先が違いますから、コミュニケーションを取ることもなかったぐらいです。
実は私自身、当社には中途で入社して以来ずっとソリューション事業本部に属しているため、他の本部との接点が多くありません。そういう意味でも、とても良い機会となりました。他部門にもこんなに優秀な社員がいるということがわかりましたし、今後は、より部門連携を図っていく必要があると思っています。
―― 他社を知ることに合わせて自社の良さを知ることもできたということですね。自社メンバー間で気づいたこと、学んだことは何ですか?
気づきが相当ありました。財務出身者は、財務諸表の分析で活躍してくれましたし、アイデアをどんどん提示してくれるメンバーもいました。そうかと思えば、積極的に発言して皆を引っ張っていくムードメーカー的な存在もいたり、時には一歩引いて全体を俯瞰して物事を見ることができる仲間もいて、本当にバランスが取れていると感心してしまいました。そうしたお互いの特徴を捉えた上で研修を進めていけた気がします。
一度立ち止まり、自分を見直す勇気が次の飛躍への活力となる
―― 「他流試合型ワークショップ」の受講をどんな方に勧めたいですか。メッセージも併せてお願いします。
現場の最前線で、日々仕事に追われている人にお勧めしたいです。ワークショップに参加すると、本当に無理やりにでも一度立ち止まる機会が作られるからです。それによって、今まで自分ががむしゃらに積み上げて来たものが整理されると共に昇華される気がします。
参加するに当たっては、積極的な姿勢を持っていただきたいです。私自身も、アウトプットをどんどんしていこうと思って臨みました。



