将来は経営陣の一人としての活躍を期待される人材であっても、“現場の延長線上の感覚”で課題に取り組んでしまうことがあるのではないでしょうか。「さらに視野を広げ、視座を高めていけなければいけない」と幾度も痛感され、新たな刺激や気づきを得る機会を探しておられる方も多いと思います。
日本能率協会が開催している「エグゼクティブ・ビジネスリーダーコース(以下EBL)」は、そのような次世代の経営層・経営幹部の方々に経営視点を身につけてもらい、自らの意識や行動を変革し、自身の"目指すべき経営者像"を確立してもらうための研修プログラムとなっており、今日まで数多くの経営リーダーを輩出し続けています。
今回は、第27期プログラム(2024年度)にご参加いただいた、株式会社きらぼし銀行の川角 明大氏に、このプログラムで得られた気づきやその後の変化を伺いました。
会社の期待に応えたいと参加
―― 現在のお立場・お役目・主な業務内容をお聞かせください。
2024年(参加当時)から、きらぼし銀行とその持ち株会社である東京きらぼしフィナンシャルグループの監査部長を務めています。2025年4月にはきらぼし銀行の執行役員を拝命しました。
現在の主な業務内容は、東京きらぼしFGの監査部としてグループ会社の監査などを、銀行の監査部として支社・支店の監査、グループや本部横断的なテーマの監査などを実施しています。当社グループでは、証券会社やコンサルティング会社、キャピタル会社に加え、フィンテック企業や広告代理業などの事業領域拡大に伴う監査対応も求められています。金融機関を取り巻く経営環境が大きく変化し、また、2025年1月にグローバル内部監査基準が改定、適用されたことに伴い、金融機関のみならず、監査機能の強化・高度化が重要な課題となっています。
―― EBLに参加された背景・理由をお聞きできますか?
当社グループとしては2023年度からEBLに参加しております。元々当社グループでは、社内研修や外部派遣研修、若手中堅層を含めた短期的な外部出向など、人材育成に積極的に取り組んでいます。そうした中で、各社の部長層が集うEBLへの参加を通じて、「ビジネスリーダーに関する知識を体系的に理解してもらいたい」「外部企業のリーダーたちと親交を深めるだけでなく、何かを吸収してきてほしい」という会社からの期待を理解した上で参加しました。
―― これまでに類似の社内研修や外部研修、セミナーを受講されたことがございますか?
社内では、階層別研修やサクセッションプランの一環として社外講師を招いた研修を実施しており、マネジメントやリーダーシップをテーマにした研修に参加したことがあります。また、外部派遣についても、ビジネススクールや銀行協会が主催している業務別・階層別の研修を受講する機会も用意されています。
私自身は、数日間の短期研修の経験はありましたが、EBLのように社外の方々と長期にわたって参加する体系的な外部研修は初めてということもあり、大変貴重な機会をいただいたと感じております。
講師や経営者からの学びを活かせているか、と日々自省を繰り返す
―― EBLの受講にあたっての準備や心構えをお聞かせください。
各単位の課題図書や事前課題を丁寧に取り組むことは勿論ですが、一番大事なことは、異業種の方々とお会いして議論をするにあたって、自社に関しての理解を深めておくことだと思います。参加する社外の方へ自社のことを明確に伝えられるように、統合報告書や各種IR資料を改めて読み込んだり、人事部門などの部署にもヒアリングを実施して、自分自身の理解を深めて受講しました。
―― EBL全体を振り返って印象に残っていることは何ですか?
特に印象に残っているのは、経営者講演です。ご登壇いただいた5名の皆様いずれもが経営のトップとして組織の飛躍的な成長を導いている方なので、多くの学びや気づきを得ることができました。各々経営に対するアプローチやパーソナリティは異なっているものの、「重要なことを繰り返し伝える」「健全な危機感を持つ」など、経営者としての共通項があることを学びました。また、各講演後に実施した参加者との振り返りディスカッションでも、「私は○○さんのような経営スタイルを目指したい」といった、一人ひとりが理想とする経営者像をイメージしながら、活発に意見を交わしたことは今でも心に刻まれています。個人的に特に印象深かったのが、「経営者は300%の熱量が必要だ」という言葉です。実経営者からのパワフルなメッセージは圧巻で、心に響くものがありました。
また、各単位で「気づき」「私が成すべきこと」「経営者としての役割」「社内で実施すべきこと」などをまとめたレポートを提出するのですが、EBLが修了した今も手元に置いて、必要に応じて振り返り、実務に活かすように心がけています。私にとってはマネジメントにおける羅針盤のようなものです。


4カ月間で得られた実践的な戦略的思考力と人脈
―― EBLを通じて得られたことやご自身における具体的な変化をお聞かせください。
これまでは、どうしても自部署の目標達成に向けて、リソースを踏まえて判断・対応しがちでした。そうではなく、「リソースより戦略が重要」であることをEBLを通じて学ぶことができたので、現在は日々実践するようにしています。「現在有しているリソースで何ができるのか」という発想をしていては、いつまで経っても"ブレイクスルー"は実現できません。「どういう戦略で何をすべきか」を改めて自問しているところです。特に、監査部長としては、その意識が重要だと思っています。
他にも、「日本企業の低利益率要因には不十分な標準化が挙げられる」「付加価値を上げなければいけない」という単位講師の先生のご指摘を踏まえて、金融機関としての業務標準化や高度化に向けた本部施策の徹底状況などを監査部で確認し、そこで生じた現場と本部とのギャップを含め、さまざまな検証や意見交換なども行い、監査の有効性を高めていこうと考えています。
また、社員のプライドや貢献意欲を高めるための発信やそのための結果、成功体験を共有することにも意識を強く持つようになりました。
―― 他社メンバーとの交流については、いかがでしたか?
多くが上場企業の同じような立場・世代のメンバーであったので、和気あいあいとしながらも、互いに真剣な議論を交わすことができました。今振り返っても、とても素晴らしい環境だったと思っています。4カ月間にもわたるプログラムでもあったので、まるで学校の同級生のような深い人間関係が構築できました。
参加したメンバーとの交流は今も続いていますし、同期会の幹事や日本能率協会さんが協働でフォローアップ研修を企画いただいているのも大変有難いと感じています。振り返ってみると、参加されていた皆さんは、いずれも学習意欲や知識レベル、論理的思考力が高かったです。バイタリティに溢れている方も多かった気がします。バラエティに富んでいて、刺激的な仲間たちで、今後も継続的に交流をしていきたいと思っています。
修了後も同じ立場の方々と業種を越えて交流できるのが醍醐味
―― EBLの魅力や良かったと感じることを改めて語っていただけますか?
一番は、外部講師の講義や経営者講演のパート毎に、グループディスカッション→共有の場があるだけでなく、しっかりと振り返りや総括の時間を設けていただいたことです。おかげで、様々な気づきや学習の深掘りができました。また、講義以外でもコーディネータの松田先生には色々と質問や相談をさせてもらいました。それらを含めて、他の研修以上にフォローの手厚さを実感しました。
そして、異業種でありながらも、経営層に近い立場でしかも同世代の仲間たちと、少人数で熱くディスカッションし合えることも大きな魅力です。本当に有意義な機会となりました。
―― EBLの受講をどんな方に勧めたいですか?
リーダーやマネジメントに必要なスキルや知識について体系的に学びたい方、好奇心旺盛な方、人に対する関心をお持ちの方なら、どなたでも良い刺激が得られると思います。しかも、さまざまな業種の同じような立場の方々との価値あるコミュニティを作ることができます。新たな発想の方法を身に付けたい方にとって、貴重な機会になると信じています。



